違法な長時間労働とは?労働基準法の時間外労働の上限

違法な長時間労働をさせたとして、大企業が書類送検や企業名の公表などのニュースになっているのは記憶に新しいところです。罰則付き時間外労働の上限規制に関する労働基準法の改正案が公表されていますが、2017年10月現在の現行法における違法な長時間労働とはどのような長時間労働を指すのでしょうか?今回は違法な長時間労働について説明します。

原則

労働基準法第32条により、原則として、法定労働時間を超えて労働をさせることはできません。

法定労働時間

1日 8時間
1週 40時間

実際の所定労働時間については、会社の就業規則や個別の雇用契約書(就業規則等)で定めることになりますが、例えば就業規則に1日の所定労働時間を9時間と定めていても、法律(労働基準法)が就業規則等よりも優先されますので、法律の定めが優先されることになります。

例外

労働基準法第36条に定める労使協定(いわゆる36協定)で、「限度時間」という基準を超えないように時間外労働できる時間(延長時間)を労使が約束します。労使が36協定で約束した延長時間を超えない限り、原則の労働時間を超えて労働させても法令違反にはなりません(平成21年厚生労働省告示316号第3条)。裏を返せば、「延長時間」を超える時間外労働は違法な時間外労働になります。一般的には、延長時間=限度時間で36協定を締結されていると思われます。

限度時間

一部の事業又は業務には、限度時間は適用されませんが、36協定の締結・届出は必要です。

(一般の労働者の場合)

1か月 45時間
1年  360時間

(対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制対象者の場合)

1か月 42時間
1年  320時間

時間外労働させる場合は労使協定の締結・労基署への届出が必要

労使協定(時間外労働休日労働に関する協定:いわゆる36協定)を締結し、管轄の労働基準監督署に「時間外労働休日労働に関する協定届」を提出する必要があります。

また、労使協定だけではなく、就業規則等にも定めが必要です。

例外の例外

臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情(納期のひっ迫や機械のトラブルへの対応等)が予想される場合に、違法な時間外労働にならないための例外の例外です。

特別条項をつけた36協定を締結すれば、延長時間を超える時間であっても労働させることができます(平成21年厚生労働省告示316号第3条)。

特別条項付き協定を締結できる要件

  • 原則としての延長時間(限度時間以内の時間)を定めること
  • 限度時間を超えて時間外労働を行わせる特別の事情(※)を具体的に定めること
  • 特別の事情とは「一時的または突発的」で「全体として1年の半分を超えない見込み」であること
  • 限度時間を超える特別の事情が生じた時に限り、労使所定の手続きにより労働時間を延長すること
  • 限度時間を超えることができる回数、時間を定めること
  • 限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金の率を定めること
  • 上記割増賃金の率は、法定割増賃金率(2割5分)を超えるように努めること
  • 限度時間を超える時間はできるだけ短くするように努めること

特別の事情

  • 予算、決算業務
  • ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
  • 納期のひっ迫
  • 大規模なクレームへの対応
  • 機械のトラブルへの対応

下記のように、特に事由を限定しない場合は特別の事情として認められません。

  • 業務の都合上必要なとき
  • 業務上やむを得ないとき
  • 業務繁忙なとき
  • 使用者が特に必要と認めるとき
  • 年間を通じて適用されることが明らかな理由

さらに延長できる時間の例

1か月 60時間
1年  420時間
1年のうち6回を限度とする

上記はあくまでも一例であり、特別条項に定める、労使合意で限度時間を超える時間の上限については、法律に定められていません。

違法な長時間労働とは

違法な長時間労働というのは、次の3パターンがあります。

  1. 36協定を締結させずに法定労働時間を超えて労働させた場合
  2. 特別条項が無い36協定を締結して、限度時間を超えて労働させた場合
  3. 特別条項付き36協定を締結して、労使が合意した時間をさらに超えて労働させた場合

罰則付き時間外労働(休日労働含む)の上限規制(改正労働基準法案)

原則

月45時間 かつ 年360時間

特例

年720時間 かつ
・原則を上回る特例の適用は年6回まで
・2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均月80時間以内
・単月では100時間未満

むすび

今回取り上げました労働基準法第36条は、時間外労働・休日労働を無制限に認めるという主旨ではないと思います。長時間労働による健康障害を予防する点からも、労使ともに時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめられるべきという意識を持って、36協定を締結されることを望みます。