妊娠中の従業員の労務管理

産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)の女性従業員から請求があったときは、産前休業をさせなければなりません。しかし、産前6週間より前であっても、つわり等の体調不良や、医師等の判断による軽減業務や安静などの措置のため、妊娠前よりも欠勤が増える可能性が高くなります。そこで今回は、妊娠から産前休業までの就労について、会社が留意すべき労務管理について説明します。

就業制限

妊娠中の女性を次の業務に就かせてはなりません。

・坑内業務(労働基準法 第64条の2)

・危険有害業務24種類(女性労働基準規則 第2条第1項)

放射線業務従事者の線量管理

女性の放射線業務従事者が妊娠の事実を事業者に申告してから出産までの期間については下記の線量を超えないこと(電離放射線障害防止規則 第6条)。

内部被ばくによる実効線量 … 1mSv

腹部表面に受ける等価線量 … 2mSv

軽易業務への転換

妊娠中の女性が軽易業務への転換を請求した場合には、使用者は他の軽易な業務に転換させなければなりません(労働基準法 第65条第3項)。

ただし、軽易な業務が無い場合には、新たに軽易な業務を創設してまで与える必要はありません(昭和61年3月20日 基発151号・婦発69号)。

労働時間

変形労働時間制における労働時間の制限

1か月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入している事業場であっても、妊産婦(妊娠中の女性+産後1年未満の女性)の請求があれば、使用者は1週及び1日の法定労働時間を超えて労働させてはなりません。変形労働時間制の適用そのものは適法なのですが、1週および1日あたりの労働時間を制限するということです。また、フレックスタイム制については、とくに制限はありません(労働基準法 第66条第1項)。

時間外労働・休日労働・深夜労働の制限

妊産婦が請求した場合には、使用者は時間外労働・休日労働・深夜労働をさせてはなりません(労働基準法第66条第2項、第3項)。ただし、労働基準法第41条に基づく時間外労働・休日労働の適用除外者については、時間外労働・休日労働の制限を受けません(深夜労働の制限は受けます)。

母性健康管理

妊娠から出産後1年までの母性健康管理として、男女雇用機会均等法で妊産婦のための保健指導又は健康診査を受診するために必要な時間の確保をしなければならないと定められています(無給でも差し支えありません)。また、健康診査等を受け、医師又は助産師から「母性健康管理指導事項連絡カード」等により指導を受けた場合、勤務時間の変更や業務の軽減や通勤緩和等を行う必要があります。医師等の指導に基づく措置が不明確な場合には、当該女性労働者を介して主治医等に連絡を取り、判断を求めるようにしましょう。

長期欠勤になる場合

つわりがひどく長期欠勤になる場合、健康保険の傷病手当金受給可能性を検討します。休みの処理について、就業規則に基づく休職規程を適用する場合には、休職可能期間が短く設定されていると、規定通りの運用では休職期間満了退職になる場合も想定されます。しかし、妊娠等を理由とした解雇(自然退職も同様に解釈されかねません)は違法で解雇は無効です(男女雇用機会均等法 第9条第3項、第4項)。だからと言って、安易に休職期間の延長という実績をつくることはオススメできません。他の私傷病休職であっても、では自分も休職期間を延長してほしいと要求されたときにトラブルのもとになります。よって、就業規則に規定された休職の措置ではなく、男女雇用機会均等法 第13条に基づく医師等の指導による必要な措置として欠勤を認める措置にすることが望ましいのではないかと思います。