「働き方改革」から取り残されないか?公立教員の長時間労働

現在政府が進めつつある「働き方改革」に伴い労働基準法の改正も行われる予定です。改正労働基準法では、罰則付きの時間外労働の上限規制が設けられる予定です。しかし、地方公務員である教員が「働き方改革」から取り残されそうな現状に現場は危機感を持っているようです。2017年8月29日に文部科学省の中央教育審議会の「学校における働き方改革特別部会」から緊急提言がなされました。
「勤務時間管理は労働法制上、校長や教育委員会に求められている責務」と指摘し、タイムカードや留守番電話の導入など、勤務時間の管理や長時間労働抑制につながる施策を求めたそうです。

民間企業であれば、「労働時間の適正な把握」は事業主の責務として当たり前のことですが、学校現場では、労働時間の管理ができていないことが問題となっています。
なぜ、これまで労働時間を把握しなくても、校長や教育委員会が教員の労務管理ができていたのでしょうか?それは、時間外勤務に関する適用法令が民間企業とは異なるからです。

原則の労働時間は労働基準法第32条で1日8時間以上かつ週40時間以上働かせることができないと定められています。
民間企業(国立・私立学校の教員も含む)では、
① 36協定の締結(労働基準法第36条)
② 割増賃金の支払い(労働基準法第37条)
の条件を満たせば、例外的に1日8時間以上かつ週40時間以上働かせる、いわゆる「時間外労働」が適法となります。

教育事業等を除く一般の地方公務員では、36協定ではなく、労働基準法第33条を適用して時間外労働をさせることができることが民間と異なる点ですが、割増賃金の支払は民間と同様に労働基準法第37条が適用されます。

しかし、公立学校の教員に時間外労働をさせる場合、上記①と②の条件は必要ありません。「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」第6条で時間外勤務を命じることができる項目については、時間外勤務を命じることができます。その項目とは超勤4項目といい、「生徒の実習」「学校行事」「職員会議」「非常災害、児童生徒の指導に際し緊急の措置を必要とする場合など」の4項目です。しかし、割増賃金は支払われません。給特法第3条でその教員の給与月額の4%の教職調整額が一律に支給されるだけです。毎日定時で帰る先生も、残業・休日出勤・持帰り残業をする先生も4%の教職調整額が支給され、それ以外の時間外勤務手当や休日勤務手当は支給されません。よって、月例給与計算上、管理職が部下の教員の時間外勤務の実態やその時間数を把握する必要性がないことが、結果として一部の教員の長時間労働を蔓延させていることにつながると考えられています。

公立学校の教員でも労働基準法第32条が適用されているので、使用者である校長や教育委員会は、当然に教員の労働時間の適正な把握をしなければなりません。さらに問題なのは、超勤4項目以外にも長時間労働となる原因、例えば保護者からの電話対応や生徒指導など学校として必要な業務については、時間外労働として命じることができず、教員が自主的に働いているという体裁になっています。

教員の働き方改革を考える上で、月給の4%の教職調整額の見直しがしばしば論点として挙げられています。昭和46年に教職調整額が導入された時の考え方は、
・教育は、特に教員の自発性、創造性に基づく勤務に期待する面が大きいこと
・長期の学校休業期間等があること
から、一般の公務員と同様な時間管理を行うこと、とりわけ超過勤務制度は教員にはなじまない、ということから、制定当時の教員の平均的な超過勤務時間をもとに月例賃金の4%という額が決められたとのこと。

今後、「学校における働き方改革特別部会」から緊急提言を受け、教育の質の向上につながるような、教員の労働時間管理や給与制度の見直しが着実に進められることを期待したいと思います。