ブラック企業と言われないための固定残業代制度の運用とは?

固定残業代とは、一定時間分の時間外労働、休日労働及び深夜労働(以下「時間外労働等」という)に対して定額で支払われる割増賃金のことで、定額残業代などと呼ぶこともあります。これは、時間外労働等の有無にかかわらず、一定時間の時間外労働等を行った場合に支払うことを意味しています。
つまり、「残業してもしなくても固定残業代を貰えるのであれば、残業しなければラッキー!」なのですが、巷では「固定残業代を導入する会社はブラック企業である」という意見が多いです。
これは、いわゆる固定残業代の運用方法が間違っているために法令違反になっているから、ブラック企業であると言われるのです。

例えば、基本給20万円(うち固定残業代30時間分3万円を含む)としましょう。
・残業時間が30時間未満の月では、固定残業代3万円を支払わない。
・残業時間が30時間を超えた月では、基本給20万円のまま、追加の賃金を支払わない。
上記のいずれも、違法な運用です。
長時間労働が蔓延する職場で、かつ、各労働者の労働時間の把握が難しいからという理由で固定残業代制度を導入する事例が多いように思います。

さらに、正しく制度設計で来ていない場合には、最低賃金法に違反する可能性もあります。
先ほどの例で確認してみましょう。
基本給20万円(うち固定残業代30時間分3万円を含む)の場合、月の平均労働時間は170時間です。

まずは、基本給(20万円-3万円=17万円)が最低賃金以上であるか否かを確認します。
月額の基本給÷1ヶ月平均所定労働時間
=17万円÷170
=1,000円…※時給
これは大阪府の最低賃金883円(2017年7月現在)以上で合法です。

次に、固定残業代(30時間分、3万円)が最低賃金以上であるか否かを確認します。
法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えるので割増賃金(1.25倍)で計算します。
固定残業代÷(固定残業時間×1.25)
=30,000÷(30×1.25)
=800円
これは、大阪府の最低賃金883円(2017年7月現在)を下回るので違法です。

これを適法にするためには、
①固定残業代の額を増やす
②固定残業代の残業時間を減らす
のどちらかを行うことになります。

①固定残業代の額を増やす場合
固定残業代=1,000円(※時給)×1.25×30=37,500円
よって、固定残業代を増やす場合には、30,000円から37,500円に変更しなければなりません。

②固定残業代の残業時間を減らす場合
固定残業時間=固定残業代÷(1,000円×1.25)
=30,000÷(1,000×1.25)
=24時間
よって、固定残業時間を減らす場合には、30時間から24時間に変更しなければなりません。

このように、固定残業代制度は給与計算や残業時間の管理が容易になるものではありません。
生活残業等のダラダラ残業が多い職場では、不必要な残業を抑制する目的として、固定残業代制度は一定の効果があると思います。しかし、長時間労働が蔓延している職場で固定残業代制度を導入することは、法令違反のリスクが高いと思います。