予防労務とは何か?

予防労務とは

予防労務とは、労働者と使用者との関係が悪化してトラブルになること(以下「労働トラブル」と言います)を未然に防ぐための労務管理の実践を意味します。

労働者と使用者の立場の違いから生じる様々な事象の要因、原因を究明し、その要因、原因を取り除くことにより、労働トラブルの予防や、永続的な企業の成長を図ることを目的とします。

予防労務の1次予防、2次予防、3次予防

例えば、予防医学の分野では、3つのタイプの予防が知られています。

1次予防(健康増進、疾病予防):傷病(疾病や傷害)の発生を予防する

2次予防(早期発見、早期治療):発生した疾患を早期に発見し、重篤化や合併症を予防する

3次予防(リハビリテーション):疾患の影響を低減する

病気の種類によっては、かなり進行しないと自覚症状が現れません。

自覚症状が現れた時には、すでに治療が難しくなっていることもあります。

生活習慣の改善により病気の芽を育てないことや、定期的な健康診断による病気の芽を早期に摘み取ることで、生活の質が維持できるものです。

そこで、予防労務の分野でも同様に、3つのタイプの予防に分類できると考えます。

1次予防(活力のある職場、労働トラブル予防)
経営理念の共有、法令遵守、就業規則の適切な運用

2次予防(早期対応、早期解決)
管理職教育、報連相の徹底、身近な専門家(社労士等)の支援

3次予防(労働トラブルの影響の最小化)
専門家(弁護士、社労士)の支援

予防労務のポイントは「就業規則」

創業当初の少人数での家族経営では、それほど問題にならなかったかもしれません。

しかし、会社の成長に伴い、新たに労働者を雇用することになると、労働者と使用者の立場の違いからくるコミュニケーション・ギャップが生じます。

職場のルール1つ取っても、御社の常識と、各個人が思う世間の常識とは必ずしも一致しません。だから、明文化されたルール、即ち「就業規則」が必要になるのです。

法律では常時使用する従業員が10人以上になれば就業規則を作成しなければならないです。

10人未満で就業規則を作ってはダメ!ということではありません。

1人でも従業員を雇うことになれば、就業規則の作成を検討しても良いのです。

就業規則は法令を基礎にしているため、条文の意味を理解することが困難だと思います。

しかし、専門家の指導を受けて条文を平易な言葉に書き換える「ルールブック」の作成や、日常の労務管理で運用する時に役立つ「就業規則の取扱いマニュアル」を作り、実際に日常業務で運用をすることにより、自然に就業規則に沿った運用ができます。

いざ、労働者の人数が増えてから運用方法を勉強するよりも、労働者の人数が少ない時から、運用とマイナーチェンジを繰り返して、御社にピッタリ合う就業規則へと育てていくことをお勧めします。

「予防労務」の由来

私がこのブログのタイトルに「予防労務」としたのは、「予防的労務管理」を推進する社会保険労務士として活動をしているからです。

「予防的労務管理」という言葉を知ったのは、ある弁護士の講演を聴いた時です。
その方の著書である「労働判例に学ぶ予防的労務管理」の考え方に、とても感銘を受けました。
労働判例とは、労使が争い裁判になった事件について裁判所が下した判決のことで、事件の概要や判決の主旨が示されているものです。

医学に例えると、労働判例は症例報告に相当すると思いますが、医学研究ではその症例報告よりもエビデンスレベルの高い研究があります。それは、集団を対象とした研究です。

例えば、無作為に対象群と介入群の2群に分けた「ランダム化比較試験」、
長期間にわたり生活習慣等の様々な要因と病気との関係を調査する「コホート研究」、
病気に罹患した人と罹患していない人とで、どのような要因が異なるのかを調べる「症例対照研究」です。

しかし労務管理の分野では、集団を対象とした研究は少ないので、実際の予防労務の基本は判例・裁判例に学ぶことになります。

予防労務を英語で“Preventive Labor Management”ではなく、“Preventive Labor Relations”と表現したのは、このブログのテーマである「予防労務」では、判例・裁判例に学ぶ労務トラブルの予防に限らず、活力のある職場づくり、リーダーシップ論、人材育成、福利厚生など、労働者と使用者の関係を良くするための事項を広く含有するという意図からです。

予防労務は、有効な予防対策を開発・実践するだけではなく、既に発生した労働トラブルの悪化を防ぐようにコントロールするものです。

このブログでは、労務管理の専門家ではない人たち、とりわけ経営者のために、労務リスクに関する情報を分かりやすい形で伝えたいと思います。