就業規則の不利益変更を円滑に進める5つの人事施策

会社が作成した就業規則を一方的に変更することで、労働者にとって労働条件の不利益変更となる場合、円滑に変更をするためにはどのように進めればよいでしょうか?今回は、就業規則の不利益変更を円滑に進めるためのポイントを説明します。

法律上のポイント

労働条件の不利益変更については、労働契約法第10条に示されています。

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当然変更後の就業規則に定めるところによるものとする。(以下略)

例えば配偶者手当の廃止について検討するとき、労働者にとって労働条件の不利益変更となりますので、上記労働契約法第10条に照らして慎重に検討を進めることになります。

人事施策上の5つのポイント

  1. ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組
  2. 労使の丁寧な話合い・合意
  3. 賃金原資総額の維持
  4. 必要な経過措置
  5. 決定後の新制度についての丁寧な説明

①ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組

ニーズの把握

  • 会社による従業員へのヒアリング
  • アンケート調査
  • 意見交換会
  • 労働組合(労働者代表者)による組合員(従業員)への意見収集…など

想定されるニーズ

  • 会社の経営目標を達成するために、能力・成果を反映した人事制度の見直し
  • 成果型の人事制度の見直しをする中で、仕事の成果と関係の無い属人的要素の見直し
  • 共働き世帯や独身者の増加など、従業員のライフスタイルの多様化を踏まえた、納得性・公平性のある制度への見直し
  • 配偶者手当の支給対象者に男性が多く、女性社員に対して不公平である制度である現状
  • 次世代育成推進の観点から、子供に厚く手当を支給する制度への見直し…など

②労使の丁寧な話合い・合意

会社規模や労使関係により労使の話合いや合意に要する期間は様々ですが、多くの場合1~2年程度の期間をかけて労使の丁寧な話合いが行われることになります。そして、労使協議の段階から、従業員に対して説明会を行うなど、十分な予告期間を設け、従業員の納得性を高める取り組みを行います。

交渉のプロセスを明らかにする

  • 労使協議の議事録等を従業員に公表すること
  • 検討初期の段階から、労働組合(労働者代表者)に制度の趣旨を伝え、一方的な制度変更とならないようにプロセスを大事にすること…など

③賃金原資総額の維持

従業員が「新制度はコスト削減の施策である」と誤った認識を持たれないように、賃金原資総額の維持をします。例えば、次のような方法があります。

  • 削減した手当の原資を、賃金制度の基本給に組み入れる
  • 原資総額を維持した上で、実力・成果・貢献に応じて賃金が分配されるように、賃金制度を整備…など

④必要な経過措置

新制度導入前と導入後でいくつかのモデルケースで給与シミュレーションを行い、賃金が増額する場合と減額する場合の例を明らかにするとともに、移行措置について検討します。

制度変更前に、既に手当が支給されていた従業員を対象として、経過措置を設けるケースが多いです。例えば、調整給という項目に変更し、数年かけて段階的に減額・廃止するケースもあります。

⑤決定後の新制度についての丁寧な説明

新制度に関する説明を丁寧にするとともに、制度改定の意図や制度変更による会社の将来像を説明して、従業員の理解を得ることが重要です。

従業員への周知資料を作成、配布し、上長または人事担当者が丁寧に説明します。

また、説明会では、会社からの一方的な説明だけではなく、従業員からの質疑応答の場を作りましょう。

むすび

就業規則の不利益変更を円滑に進める一番のポイントは、従業員の納得性を高める取組をすることです。

労働関係諸法令や判例を参考にするだけではなく、新制度を検討する初期段階から従業員が意見を述べる機会を設けるなど、制度変更について、丁寧な説明をすることが重要だと思います。