経営者が出産するときに利用可能な社会保険のサポート

内閣府男女共同参画局による「女性起業家を取り巻く現状について」によると、女性が起業する年齢で最も多いのは(平成19年度の調査より)、
1位:35~39歳(12,100人)
2位:30~34歳(10,400人)
3位:65歳以上(9,900人)
でした。
女性起業家は30歳台の人数が他の年代に比べて相対的に多い傾向がありました。

「一億層活躍社会」実現のための3本の矢のうち2本目の矢である「夢をつむぐ子育て支援」の中に「仕事と子育てを両立できる環境」も挙げられています。
経営者の仕事と子育ての両立の環境はどうでしょうか?

経営者は労働者ではないので、労働基準法の産前産後休業、育児介護休業法の育児休業、雇用保険関係の給付金や助成金の対象外ですが、今回は、女性経営者が出産するときに利用可能な社会保険のサポートを紹介します。

1.健康保険の出産育児一時金

役員報酬の有無にかかわらず経営者にも、1児につき42万円(※)支払われます。健康保険組合によっては、さらに付加給付が支給される場合があります。
※妊娠週数が22週に達していないなど、産科医療補償制度対象出産では無い場合は40万4000円。

出産育児一時金の直接支払制度を利用すると、健康保険から医療機関等に出産育児一時金が支払われるため、窓口での支払いは差額だけで済みます。直接支払制度が利用できない小規模な施設では受取代理制度が利用できます。

【手続き】
「出産育児一時金支給申請書」を管轄の協会けんぽ支部か健康保険組合に提出
(受け取り方法に応じ、出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書)
<添付書類>
必須:出産費用の領収・明細書の写し
該当:(内払金支払依頼書として提出するとき)医療機関で交付される直接支払制度の代理契約文書の写し

2.出産手当金

経営者も出産で仕事を休み、報酬を受けられない時は、出産手当金が支給されます。
労働基準法の産前産後休業期間は、原則産前42日(多胎妊娠の場合98日)から産後56日です。健康保険法の出産手当金の支給期間は労働基準法の産前産後休業期間と同じです。
産前産後休業期間中に会社から報酬が支払われない場合、経営者でも健康保険から休業前の給与(正確には、標準報酬日額)の3分の2の金額が支給されます。ただし、会社から報酬を受ける場合は、その報酬額を控除した金額が支給されます。

【手続き】
「出産手当金支給申請書」を管轄の協会けんぽ支部か健康保険組合に提出
<添付書類>
必須:(初回申請時)出産手当金の対象期間とその前1ヶ月分の出勤簿と賃金台帳の写し
役員等で出勤簿・賃金台帳が無い場合は、役員報酬を支給しないこととする役員会議の議事録の写し

3.厚生年金・健康保険の保険料免除の手続き

経営者の場合は、報酬の有無にかかわらず、産前産後休業期間中の保険料免除が受けられますが、育児休業期間中の保険料免除の制度については対象外です。

保険料の徴収が免除される期間は、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日の月の前月(産前産後休業終了日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)までです。免除期間中も被保険者資格に変更はなく、将来、年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。

【手続き】
「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」を事業所管轄の年金事務所(協会けんぽ以外の健康保険組合)に提出
<添付書類> なし

提出時期に注意!この申出は、産前産後休業をしている間に行わなければなりません。

4.産前産後休業前から産休復帰後の役員報酬がダウンした場合の手続き

産休復帰後に休業前よりも役員報酬がダウンした場合、年金保険料の基礎となる標準報酬月額もダウンします。支払う保険料が少なくなれば、将来受け取る年金額も減るのが原則ですが、この申出をすることにより子供が3歳になるまでは、減額した標準報酬月額に基づく保険料で支払う一方で、将来受け取る年金額は減額前の標準報酬月額に基づき計算されます。

【手続き】
「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を事業所管轄の年金事務所に提出
<添付書類>
1.戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書
(申出者と子の身分関係および子の生年月日を証明できるもの)

2.住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)
※申出者と子が同居していることを確認できるもの
※提出日から遡って90日以内に発行されたもの
※養育特例の場合、要件に該当した日に同居が確認できるもの

上記は本記事執筆時点(2017年8月)の情報です。
労働関係法令や社会保険関係の法令の法改正により制度が変わる可能性もありますので、
最新の情報は、日本年金機構、協会けんぽ、健康保険組合のホームページなどでご確認ください。